薬が人を治すわけではありません
漢方を勉強されている方に、「いくつぐらい方剤を知っていますか?」と聞かれます。
私は30も知りません。
多く知っていればよいというものではないと考えているからです。
私はいつも言っていますが、「薬が人を治す」わけではないのです。
病気とは「気の病」。気が人を変えるのです。
ですから、私たちが見なければいけないのは、病気ではなく「人」であると何度かお伝えさせていただきました。
方剤を20種類ぐらい紐解いたときに、ふと、「人」の体のパターンは5,6種類しかないことに気づいたのです。
例えば、「桂枝湯の人」がわかれば、「麻黄湯の人」「葛根湯の人」「桂枝加芍薬湯の人」「小柴胡湯の人」・・・と、ただ細分化しているだけだということです。
それを方証相対では、やれ気虚、血虚といい、よけいにわかりにくくなってしまっているのですね。
私にすれば、「加味逍遙散」「桂枝茯苓丸」「当帰芍薬散」は基本は同じ身体の人にしか見えません。実虚の程度が違う程度です。
身体は同じですが、「人」としては全く違います。見ればわかります。
そして、本当に大事なことは、「お薬で全てを治してはいけない」のです。
これは『黄帝内経』にも書いてあります。
内因病は、その病気になった原因が、「その人の中」にあるのです。
つまり、「病気」を治したところで、その原因(本)を解決しなければ、また病気になるのです。
「本」とは病気に限ったことではありません。その人の「中心」で見えにくくなっていることは、以前お話しさせていただきました。
必ず、この「本」は自分の力で治さないといけないのです。
それに気づいたとき、私はお薬以外の方法も勉強し始めました。
お薬は「手段」です。それ以外の「手段」もたくさんあるのです。
その人が継続できる「手段」を提案し、自分の中心と戦っていくお手伝いをさせていただくのです。
これが「養生」の提案だと思っております。