食医と薬膳
「薬膳」を勉強されてる方に、いつも、「料理で最も大事なものは何だと思いますか?」と質問してしまいます。
昔の中国には、食事や料理を持って、皇帝の健康を管理する「食医」という官職がありました。当時では最も位が高かったと言われています。
この方々は、「弁証施膳」をもって治療にあたっていました。
これらを現代では「薬膳」と呼び、健康法や未病予防に用いられています。
しかし、ここで間違ってはいけないことがあります。
「弁証施膳」と「食養生」は全く違うということです。
「食養生」とは「養生」、すなわち「自分の生を養う」ことを指すと、以前お話しさせていただきました。
つまり、「自分のため」です。
「弁証施膳」とは「施膳」、すなわち「膳を施す」ということは、「他人のため」なのです。
「薬膳」を目指す方は、この辺りをごちゃまぜにして見ています。
向いている方向が逆なのですね。
向いている方向が逆ということは、「気」の方向が変わるのです。
私が「食医」だと信じている方が、一人いらっしゃいます。
その方は自分でお店を持つわけでもなく、料理の修行してきたような方でもありません。
ただ、「包丁さばきが得意」ということだけで、料理をされる程度の方です。
その方に料理を振舞って頂いたときに、とても楽しそうに料理をしていたので、「どうしてそんなに楽しそうなんですか?」とお聞きすると、こう答えました。
「みんなが喜んでくれるのが目に浮かぶ」と。
この方は、ただただ、人のために料理をしていたのです。
聞けば、「どうすればみんなが喜んでくれるか、食材が教えてくれる」というのです。
食材の声が聞こえるのですね。
そして、本当にそれを食した方々は、魔法のように良くなっていくのです。
正直、お店でも出してもらって、病気の人を全員送りたいぐらいです(笑
ちなみにこの方に「料理で最も大事なものは何だと思いますか?」と聞いてみました。
「愛っ!!」
愚問でした(笑
この方は「肝」の人だったのです。
自分への見返りを考えず、ただただ、他人のために無償の愛を放つ方だったのですね。
当時の食医とは、自分の命をかけていたわけです。
皇帝の健康状態に何かあれば自分の責任ですからね。
貴方は自分の料理に、自分の命をかけることができますか?